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薬を出してくれないと不満を持つ患者の対応について

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今回のコラムは薬を出してくれないことへ不満を持つ患者への対応についてです。薬剤師と患者のやりとりから、どのように対応するのが適切なのかを考えてみましょう。

患者の状況

患者65歳 女性 Sさん
薬局ご利用状況・かかりつけ薬局としてご利用いただいている
・皮膚科と内科に定期的に受診され処方薬あり

薬剤師と患者のやりとり

患者:
すみません、ちょっと相談したいことがあって。

薬剤師:
いかがされましたか?

患者:
今朝からすごい便秘が強くなってしまって…私、ちょっとしたことでも気になってしまう性格で、こんなことで相談にくるなんてお忙しいのに申し訳ないのですが…

薬剤師:
気になさらないでください。いつでも気になることがあるときはご相談にいらしてくださいね。Sさんの履歴を見ていますが、以前内科で酸化マグネシウム錠の処方がありましたが、それはお使いですか?

患者:
前にもらった酸化マグネシウム錠がまだ残っているので使いたいのですが、頻尿があり、便秘になってからその症状がより強くなってしまって…

薬剤師:
それはお辛いですね。頻尿のお薬はお使いですか?

患者:
ええ、頻尿は以前から気になっていたから最近この市販の薬を買って、今日で4日ほど使っています。ただ酸化マグネシウム錠と一緒に飲んでもいいのか心配で…

薬剤師:
こちらの頻尿の市販薬は清心蓮子飲という漢方薬ですね、酸化マグネシウム錠と一緒にお飲みいただけますよ。内科で頻尿のことはご相談されましたか?

患者:
ええ、相談して抗生物質が出たけど、それを飲み終わっても治らず…

薬剤師:
確かに抗生剤処方がありましたね。

患者:
その後もまた相談したのだけど、尿検査ではとくに問題はなかったから先生が薬を出してくれないの。

薬剤師:
そうだったのですね。市販薬をお使いになっていかがですか?

患者:
まだあまり変化はみられないかな…

【問題】

上記のやりとりから薬剤師はどのような対応をとるべきでしょうか?
(複数回答可)

  1. 市販薬を中止してもらう
  2. 泌尿器科受診を促す
  3. 便秘が改善すれば頻尿も良くなるので気にしないように伝える
  4. 本人の了承を得てかかりつけ内科医へ情報提供を行う

【正解】

2、4

解説

直腸や肛門に便が溜まると頻尿になりやすくなります。女性の場合、直腸に接するように前方に膣があり、さらにその前方に膀胱や尿道があるため、直腸に便が充満することにより、前方にある膣や膀胱が圧迫されます。

膀胱が圧迫されると尿意を感じるだけでなく、圧迫された分だけ溜められる尿の量が少なくなるため、「ちょっと溜まったらすぐに行きたくなる」「行っても少量のオシッコしか出ない」という状況になります。
便秘が常態化している人は常に出口付近の直腸や肛門に便が溜まった状態が当たり前になっているため、頻尿となり、その頻尿も体質や歳のせいだと思い込んでいる場合もあります。頻尿と言っても原因は様々です。

今回のケースでは、頻尿の原因は薬局でははっきりとわかりませんが、便秘悪化による可能性もあるので、手持ちの酸化マグネシウム錠で便秘の改善を図り、ご使用の市販薬をそのまま続けて様子を見てもらいましょう。ただ頻尿の症状は便秘が強まる前からあるようなので、一度専門医に診てもらうこともお勧めしましょう。

調剤・交付した後も患者の情報が入ってくるのが、かかりつけ薬局・薬剤師です。その情報を処方医に確実に伝える手段として、トレーシングレポートがあります。トレーシングレポートを介して密にコミュニケーションを取ることで、薬物治療を最適化できるだけでなく、医師の考え方を知ることができ、連携がさらに深められます。

トレーシングレポートによる医療機関等への情報提供は「患者の個人情報を第三者に提供する行為」にあたるため、患者の同意が必要です。薬局において取得した患者様の個人情報は、医療サービス提供のために利用されることは明らかなので、該当する利用目的について、患者様から明確な反対・留保の意思表示が無い限りは、黙示による同意が得られたものと考えられます。

患者本人に今回の状況を報告させていただきたいことをお伝えし、了解を得て内科医に情報提供を行いましょう。