コラム 薬局アプリ ホッペDX-

薬が新しくなることで「朝の習慣」を変えた方がいいか悩む患者への対応について

投稿日
最終更新日

今回のコラムは、薬が新しくなり服薬のタイミングが変更になることで、これまでの「朝の習慣」を変えた方がいいか悩む患者への対応についてです。薬剤師と患者のやりとりから、どのように対応するのが適切なのかを考えてみましょう。

患者の状況

患者75歳 男性 Hさん
治療内容糖尿病
服薬状況グリメピリド錠1㎎:1回1錠/1日1回朝食後/28日分
メトホルミン500mg:1回1錠/1日3回毎食後/28日分
セマグルチド錠3㎎/1回1錠/1日1回起床時/28日分
今回シタグリプチン50㎎からセマグルチド錠3㎎に変更となっている。

薬剤師と患者のやりとり

患者の妻:
今日はお薬が新しくなったらしいのですが、どれですか?

薬剤師:
シタグリプチン50㎎から、こちらのセマグルチド錠3㎎にかわっています。

患者の妻:
飲み方は同じでいいのかしら?

薬剤師:
今までは朝食後にお飲みいただいていましたが、今回のお薬は起床時にお飲みいただきます。

患者の妻:
本人は毎朝5時くらいに起きて、すぐに梅干を1個たべて散歩を1時間から2時間くらいしていて、その散歩の間でコーヒーを飲むという習慣があるのです。それでも大丈夫かしら?

薬剤師:
今回のお薬は胃の内容物があると吸収が低下するため、1日のうちの最初の食事や水分摂取の前の空腹な状態での服用が必要です。

患者の妻:
あら、どうしましょう。もう20年以上この朝の習慣を続けているから…

【問題】

上記のやりとりから薬剤師はどのような対応をとるべきでしょうか?
(複数回答可)

  1. 朝の習慣を少し変えてもらう
  2. 今まで通りの習慣でよい
  3. 朝の習慣をやめてもらう
  4. 食後の運動に変えてもらう

【正解】

1

解説

セマグルチドはGLP-1と似た作用を持ち、血糖値が高いときにすい臓からインスリンを出すよう働きかけ、血糖値を下げます。

セマグルチド錠の添付文書には、適用はあらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、 運動療法を十分に行ったうえで効果が不十分な場合に限り考慮することとされています。用法及び用量に関連する注意として、本剤の吸収は胃の内容物により低下することから、本剤は、1日のうちの最初の食事又は飲水の前に、空腹の状態でコップ約半分の水(約120mL以下)とともに 3mg錠7mg 錠又は 14mg錠を1錠服用すること。また、服用時及び服用後少なくとも30分は、飲食及び他の薬剤の経口摂取を避けること。分割・粉砕及びかみ砕いて服用してはならないと記載があります。

セマグルチドの効果を発揮するためには、服用前後に胃の中を空っぽにしておくことが大切です。今回のケースでは起床後に梅干を食べているため、吸入に影響を及ぼす可能性があります。そのためまずは起床時に食べていた梅干をやめて、セマグルチド錠を服用してもらい散歩にでかけてもらいましょう。服用から30分以上経過していればコーヒーなど水分補給を行ってもらって構いません。梅干でミネラルをとっているようなら、散歩に行くときに梅干を携帯してセマグルチド服用から30分以上経過してから食べてもらうようにお話ししましょう。

セマグルチド錠を服用してすぐの運動に関して問題はないですが、他の糖尿病薬(SU薬やインスリン製剤など) を使用している場合は低血糖には特に注意が必要ですので、ブドウ糖等を携帯し運動してもらいましょう。

糖尿病の治療のためには薬物治療と共に「食事療法」「運動療法」の 2つが大切です。今回の患者さんには長年にわたる運動習慣がしっかりあるので、これを継続してもらい血糖値のコントロールを目指しましょう。