痩せ薬のアライの取り扱いがないかどうか聞かれた時の対応について
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今回のコラムは、痩せ薬のアライを飲むと痩せられると思い、薬局に取り扱いはないか質問があったときの対応です。薬剤師と患者さんのやりとりから、どのように対応するのが適切なのかを考えてみましょう。
患者の状況
患者 | 51歳 女性 Mさん |
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薬局ご利用状況 | 内科 |
服用中のお薬 | ・フェキソフェナジン錠60mg 1回1錠 1日2回朝夕食後 30日分 ・ビベグロン錠50mg 1回1錠分1朝食後 30日分 ・アトルバスタチン錠5mg 1回1錠分1夕食後 30日分 |
薬剤師と患者のやりとり
患者:
ねえ、聞いてよ。今日は先生から体重を落とすように言われちゃったわ。
薬剤師:
体重が増えていっているのですか?
患者:
血液検査したら薬を飲んでいるのにそんなに数値が下がっていなから、もっと痩せろと。
薬剤師:
そうでしたか。
患者:
最近発売された痩せ薬のアライが気になるのよね、飲んだらちょっとは痩せられるかなと思って。こちらの薬局に取り扱いはない?
【問題】
上記のやりとりから薬剤師はどのような対応をとるべきでしょうか?
(複数回答可)
- 脂質異常症の治療をしている場合は使用できないことを説明する
- 3ヶ月以上前から食事・運動の改善の取り組みが必要であることを説明する
- 直近1ヶ月間の食事・運動の取り組みの記録が必要であることを説明する
- アライ専用eラーニング研修を受講した薬剤師はおらず取り扱いがないことを伝える
【正解】
すべて
解説
日本初の内臓脂肪減少薬「アライ」が2024年4月8日に発売されました。「アライ」は腹部が太めな方の内臓脂肪および腹囲の減少の効能をもつ日本初の内臓脂肪減少薬です。
有効成分オルリスタットで、海外では医療用としては120カ国以上、OTC薬としては70カ国以上で使用されています。通常、食事中に含まれる脂肪は、脂肪分解酵素リパーゼによって分解され、吸収されますが、「アライ」の服用によって、有効成分であるオルリスタットがリパーゼに結合し不活性化することで脂肪の分解を阻害し、脂肪の一部はそのまま便として排出されます。
副作用として消化器症状が確認されています。具体的には「油の漏れ」「便を伴う放屁」「油性排泄物」「脂肪便」などです。そのため、脂肪分が多い食事を控える、下着に便もれバットやナプキンを付けておく、外出時はトイレの場所を把握しておくなどの対策が求められます。
購入条件は以下になります。
- 成人(18歳以上)である
- 腹囲(へその高さ):男性85cm以上、女性90cm以上 (メタボリック症候群の内臓肥満)である
- 肥満症ではない
- 3カ月以上、食事・運動への取り組みを行っている
- 1カ月の体重や腹囲など生活習慣記録があること
肥満症とはBMI > 25に、下記1つ以上を満たすものをいいます。
- 耐糖能障害 (2型糖尿病・耐糖能異常など)
- 脂質異常症
- 高血圧
- 高尿酸血症・痛風
- 冠動脈疾患
- 脳梗塞
- 一過性脳虚血発作
- 非アルコール性脂肪性肝疾患
- 月経異常・女性不妊
- 肥満関連腎臓病
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
- 運動器疾患 (変形性関節症:膝・股関節・手指関、変形性脊椎症)
また要指導医薬品である「アライ」は日本肥満学会が監修したeラーニングを終了した薬剤師のみが販売に従事できます。今回のケースでは調剤薬局がもし販売店であったとしても、この患者は「アライ」の対象者には該当せず、購入使用することはできません。
簡単に薬で結果を期待したくなる気持ちも理解しつつ、動物性脂肪を減らすなど摂取カロリーを今よりもダウンし、早足歩行等の運動で消費カロリーアップするように、無理なく生活の中に組み込んで継続し体重減少につながるよう支援していきましょう。